202号室の、お兄さん☆【完】
「みかどちゃんっ」
「ぎゃっ!」
ぼーっと皇汰の言葉を考えていたら、壁穴からお兄さんがにゅっと顔を出しました。
「ぎゃって」
お兄さんが苦笑します。
そして、お邪魔しまーす、と言って私の部屋に侵入して来ました。
私の部屋はすっかり壁のゴミは取り除かれていました。
「明日はバイト、いつも通りでお願いしますね」
「はい! お兄さんも孔礼寺からカフェまで距離あるから頑張って下さい」
私がそう言うと、お兄さんは今気づいたようで苦笑した。
「それにしても、どっかり開いてしまいましたね」
「へへへっ 皆さんの愛の労働のおかげですよ」
お兄さんの部屋の様子も少し気になりますが、これ以上詮索したら失礼かもしれません。
「……心の壁って、障害になったら避けるか飛び越えるか、じゃなくて、壊して良いんですね。みかどちゃんのおかげで勉強になりました」
ペタペタと壁を触りながら、お兄さんは優しく優しく言います。
そして、私を振り返り、ちょっぴり悪戯っ子のように笑いました。
「この壁は直っても、僕の心の壁は直りませんから。
みかどちゃんが、侵入したままですからね」
そう言うと、岳理さんも壁から顔を出しました。