202号室の、お兄さん☆【完】


「客に『いらっしゃいませ』は?」

将来、住職さんとは思えない、サングラスに黒のTシャツ姿の偉そうなお邪魔虫に、言いたくないです。


「いたっ お兄さん、今私、髪の毛を引っ張られました!」

「もー、せっかく僕が結んだのに。岳理くん、どうしたの?」
お兄さんがお水を出すと、岳理さんはサングラスを取って、深い溜め息をつきました。


「依頼主と待ち合わせ。ここら辺で迷い猫を見たってさ」

そう言うと水を一気に飲み干し、自分でおかわりまでしてしまいました。


「白い毛並みで黒のぶちって、もうあのデブ猫で良くね?」

外のベンチで、偉そうに眠っている定宗さんを指差して言いました。

全然、良くないと思うのですが……。


「あの……、依頼された猫さんって『ヴィクトリアーヌ』ちゃんですか?」

嫌な予感がして尋ねるが、岳理さんは水を飲みながら、アッサリ頷いた。


「そうだけど?」


あ、嗚呼、10万円が……。


せっかく探そうと思ってたけど、やはり地道に働かなきゃいけないんですね。

私が露骨にガッカリしたのを、意地悪大魔王岳理さんは見逃しませんでした。



「お前、金困ってんの?」

「へ?」

何故、いきなり核心を!
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