202号室の、お兄さん☆【完】


『着信が何度もあったようだが?』

やはり背筋がピンと伸び、緊張してしまう。

そ……そうなんだ。

私にとって父親は、『恐れ』の対象なんだ。


わ、私、この人が怖いんだ。

蔑んだ目も、威圧的な態度も、皇汰には向けられる笑顔も、全部全部、


現実を知ってしまった今は、ただただ恐怖しかないんだ。




「に、日本に帰ってきてるの?」

『たった今だ。空港に着いた』

震える声の、なんて情けない事か。


「は、話したい事があるので会えませんか?」

『……お前とは電話で話しているが?』

沈黙の後、やや不満そうな父の声に冷や汗が出た。


「でもあ『今日は今から会食が入っている。明日も会議や会合だ』


「大事な話なんです!」

『……』


父の話を遮ってそう叫ぶと、父は深い溜め息をついたのが携帯越しでも分かった。



『――どうせ、金の事だろう?』

「へ……?」

『お前が真絢と上手くいかずに出て行ったくせにな』


違う……。全然違うのに……。

『お金は、1人暮らしの学生の必要な料金を統計データに基づいて送る』

そう、事務的に言われて私は、


……何も言い返せなかった。


 
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