202号室の、お兄さん☆【完】
まだ、何か話していた気がしたが、情けない事に携帯を切ってしまった。
――あ、あんな何年しか過ごしていないお義母さんの話を全部信じて、
18年一緒にいた私の話は何1つ聞いてくれないんだ。
ねぇ、それって、
本当に私は一緒に居たの――?
どこに、私の存在はあったの?
本当は、私なんて……?
一番恐れていた真実が、現実だとしたら……。
私は、私はー……。
ただただ、その場に座り込んでしまっていた私に、道路の方から声をかける声がした。
「すみませぇん! ここぉ、『オルティンドー』というお店かしら?」
振り返ると、ギラギラの金色縁のメガネに、飴玉みたいな宝石が乗った指輪を何個もした、紫色の髪の年配の女性が立っていた。
「は、はい」
「此処で、イケメンの探偵と待ち合わせなのぉぉ。フフフ、入って宜しいかしらぁ?」
そう言ってズカズカと入って来る。
遠慮の無いこの方の言動に、今はとても救われた。
「はい、あの中に多分お待ちですよ」
「まぁぁぁ! 本当に?」
いそいそと中へ入って行こうとして、ドアを開けた瞬間、その方は立ち止まった。
「ヴィクトリアーヌちゅわぁん……」