202号室の、お兄さん☆【完】


「あらん……」

厚川さんと言われていた女性は、お兄さんのドアップに頬を染めました。


「定宗さんは、20年前からこの体系なんです。子猫の写真とは時期が一致しません」

そ、っか……。
お兄さんは20年前に定宗さんに発見されているから、定宗さんの事は誰よりも知っているんだ。

本当に定宗さんは何歳なんだろ?
猫さんって22年生きたら猫又になるって聞いた事ありますよ?

私が首を傾げていたら、厚川さんはハンカチを取り出して、お兄さんをチラチラ見ながら泣き出した。


「いいえっ! この子は20年前に私が捨ててしまったヴィクトリアーヌちゅわんです……。毎日毎日、忘れもしませんでした。目つきの悪い眼、懐かない気品、低重音の鳴き声、全て全て、昨日のように覚えています」
す、捨ててしまった……?

私が言葉を失っていたら、岳理さんが舌打ちをして、私を庇うように前に出た。



「話しが違いませんか? 俺は室内で飼っていた猫が窓から飛び出してしまったという迷子猫だと聞いてましたが……?」


そう言うと、さらに厚川さんはさめざめと泣き出した。




「だって!!
あなたみたいなイケメン探偵に、捨てたなんて言えなくて……」


あ、嗚呼、滅茶苦茶だ。この人。
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