202号室の、お兄さん☆【完】


「……お前ら」

店に入ろうと一歩踏み出した状態で、岳理さんは固まってしまいました。

私と定宗さんを前から抱き締めてくれているお兄さんを見て、苦笑します。


「どっちが抱き締められてんだか」

そう言うと、落ちていたゾウサンジョーロに、外に設置している蛇口からお水を入れだしました。


「猫違いだったよ」


キュッと閉めると、バジル達にお水をあげ始めました。


「20年前の話だ。ヴィクトリアーヌちゅわんは、とっくに幸せに人生を全うしてる。あのオバサンに捨てられた後、金持ちの家に引き取られ、ナイスバディの美人猫と結婚し、孫まで産まれてる」

ペラペラと、膨大なヴィクトリアーヌちゅわんの人生ストーリーを話しだしたので笑ってしまいました。


「お前ら、信じてねーだろ?
名探偵を舐めんなよな! ちゃんと調べたんだよっ」


そう言って、水をやり終えると、両手を出して来ました。



「捨てる糞もいれば拾う神あり、だ。

捨てられたヴィクトリアーヌが、幸せにならねーワケねーだろ」

そう言って、力強いその腕で、私とお兄さんを立ち上がらせてくれました。



「あんまベタベタすんな。

羨ましいだろーが」


ちょっぴり皮肉を吐かれましたがね。
< 324 / 574 >

この作品をシェア

pagetop