202号室の、お兄さん☆【完】
「……お前ら」
店に入ろうと一歩踏み出した状態で、岳理さんは固まってしまいました。
私と定宗さんを前から抱き締めてくれているお兄さんを見て、苦笑します。
「どっちが抱き締められてんだか」
そう言うと、落ちていたゾウサンジョーロに、外に設置している蛇口からお水を入れだしました。
「猫違いだったよ」
キュッと閉めると、バジル達にお水をあげ始めました。
「20年前の話だ。ヴィクトリアーヌちゅわんは、とっくに幸せに人生を全うしてる。あのオバサンに捨てられた後、金持ちの家に引き取られ、ナイスバディの美人猫と結婚し、孫まで産まれてる」
ペラペラと、膨大なヴィクトリアーヌちゅわんの人生ストーリーを話しだしたので笑ってしまいました。
「お前ら、信じてねーだろ?
名探偵を舐めんなよな! ちゃんと調べたんだよっ」
そう言って、水をやり終えると、両手を出して来ました。
「捨てる糞もいれば拾う神あり、だ。
捨てられたヴィクトリアーヌが、幸せにならねーワケねーだろ」
そう言って、力強いその腕で、私とお兄さんを立ち上がらせてくれました。
「あんまベタベタすんな。
羨ましいだろーが」
ちょっぴり皮肉を吐かれましたがね。