202号室の、お兄さん☆【完】
岳理さんに助けられた瞬間、
温かい気持ちに包まれたのに、
――現実は、とても意地悪です。
ヴーヴーヴーヴー
「さ、さて、岳理さん、ランチでも食べて行かれませんか?」
ヴーヴーヴーヴー
急に岳理さんの眼が冷ややかになりました。
「あああ、マナーにしてなくてすみませっ……ああ!!」
岳理さんは名探偵なスピードで、エプロンから携帯を盗むと、手を空高く持ち上げました。
と、届きません!
「お兄さん! 泥棒です! 助けて下さい!」
そう言うと、お兄さんが携帯を奪い、画面を見ました。
「『お父さん』……」
ピッと受話器を上げて、耳元に当てました。
「はい。こちら『オルティンドー』です」
あぁああぁああ!!!!!
お兄さんも何してるんですか!!!
慌てて取り返すと、携帯に話しかけた。
「今、バイト中です!」
『――やってくれたな、お前という奴は』
携帯越しからは、父の恨みがましい声が聞こえてきました。
「は……は、い?」
『皇汰をそそのかしたのはお前だろ!』
とても怒っておられますが、
話が分かりません。