202号室の、お兄さん☆【完】
「何の事ですか?」
『出来は悪くても惚けるのは一人前だな』
「…………」
私が首を傾げつつ、返事に戸惑っていたら、また岳理さんに携帯を奪われ、スピーカーボタンを押された。
『皇汰の部屋から、皇汰の物が跡形も無く運び出されたと聞いた。
真絢も美音さんも接触禁止と弁護士が言ってきたぞ』
こ……皇汰。
出て行くって言ってたのを、本当に実行してくれたんだ。
『中学に行ったら門前払いだった。お前と話をするまで帰らないと言われたぞ』
「頭良いですね、皇汰くん」
「マセガキがっ」
2人の反応よりも、父の言動に不信が募った。
今日は忙しいと言いながら、皇汰の事なら中学まで行くんだ。
私の話は聞いてくれなかったのにね。
そう思うとつい笑ってしまった。
『何を笑ってる!?』
「で、いつならお時間頂けるんですか?」
私が、感情も込めず淡々と質問すると、少し間が合ってから答えた。
『土曜日の朝、向こうへ戻る。その前なら』
つまり、少しの間、簡潔な話し合いを希望しているみたいです。
私もいつまでも、馬鹿じゃありません。
皇汰との扱いの差には慣れたつもりでしたけどね。