202号室の、お兄さん☆【完】
「千景ちゃん! 三段飛ばしは無理だよ、危険!」
「紐パン見えるよ!」
慌ててリヒトさんとトールさんが隠す中、千景ちゃんは1人独占トップです。
……ちょっぴり卑怯ですが、ご愛嬌です。
「ぬぅ。僕とみかどちゃんがビリだから次は四段抜かししましょうね」
「は、はい!」
四段とかどう見ても無理なのに、ゲームに熱中しているお兄さんの眼差しは本気モードでした。
無邪気に遊ぶお兄さんは、どこか少し吹っ切れたように見えました。
「お兄さん、その紙袋は何が入ってるんですか?」
お兄さんが金の英字が入った黒い紙袋を肩にぶら下げていました。
「あ、例のベルギーチョコです。皆さんで食べようかと」
「まだあったんですね」
「……おばさん、毎回毎回買ってくるから、僕は贅沢ながら舌が満足してますので、食べて欲しいです」
要するに飽きてきたんだ。
「確かに美味しいとは言ったけど、他のお土産も美味しいって褒めたのになぁ……」
お兄さんが首を傾げていると、先にたどり着いた千景ちゃんと岳理さんが何か神妙な顔で話をしているのが見えました。
そして、千景ちゃんは下を向いて、少し考えてからゆっくり頷いたのがはっきり分かりました。