202号室の、お兄さん☆【完】
「おーい! 早くしろよ!」
頂上で岳理さんが、白いエプロン姿で仁王立ちして見下ろしています。
リヒトさんとトールさん、ドラガンさんに葉瀬川さん、そして私とお兄さんの順に、階段には人が点々としています。
迷惑極まりなさすぎるこの行為ですが、皆さんが格好良いのと紳士的な人達なので、すれ違う方々が好意的なのが唯一の救いです。
「みかどちゃん、行きますよ! ち・よ・こ・れ・い・い・い・い・と・お!」
「「意義有り!」」
「意義を却下する!!」
お兄さんの滅茶苦茶なチヨコレイトに、抜かされたドラガンさんと葉瀬川さんが意義を唱えたが、岳理さんが偉そうに却下しました。
その後、ジャンピング階段飛ばしで、葉瀬川さんが5段抜かししたり、ドラガンさんが隣の木の植え込みに侵入し数を水増しするという事件も起きましたが、皆さんなんとかゴールしました。
「やっぱ、姉ちゃんがビリか!」
手すりを使い三段飛ばしでゴールした私に声をかけたのは、皇汰でした。
「皇汰っ!!」
「何、半べそかいてんの?」
「此処まで、お父さんには見つからなかったの?」
「ん。母さんの弟が居るんだけど、その人に送ってもらった」
そう言って笑う皇汰は、少し大人になったように見えました。