202号室の、お兄さん☆【完】


「悩みはない」

「なっ! 悩みが無い人なんて居ませんよ!」

小窓を閉めながらそう言い切った岳理さんに詰め寄ると、急に振り返って此方を見下ろしてきました。





その目が、射抜かれるように鋭くて、熱くて、



そして、ちょっぴり怖くて後ろに下がってしまいました。


じりじりと下がる私の目を、逸らさない岳理さん。

ち、ちゃんと言葉で言って欲しい。

私は、あなたの言葉が欲しいんです。



「みかどには、本当に感謝している」

そう言って、一歩近づいて来ました。


わ、――私は、
距離が遠いと不服を言ったのに、

岳理さんが一歩近づくと、一歩下がり、また近づくとまた下がり、とうとう入り口の壁にぶつかってしまいました。



言葉が、
本音が、
欲しいけれど、

その射抜くような目が、
怖いのは、
何故なんだろう。





「俺の方が鳴海より前に、みかどを知ってた」


「へ、へぇ~~……
って、えぇえ?」


行き止まりなので、手探りでドアノブを探す、いつぞやのデジャヴが思い出される中、

ドアノブを見つけた手ごと、握られ、逃亡を阻止されてしまいました。




「あのお色気くそババアに、お前の写真を見せられた時、なぁんか不幸気取りの顔で、印象に残ってた」
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