202号室の、お兄さん☆【完】

「岳理くん、少しだけ元気になってますね」

ホースで葉瀬川さんと千景ちゃんを追い回す岳理さんは、――私はいつも通りに見えるのですがお兄さんには違って見えるのかもしれません。


「はやく吹っ切れて欲しいんですが、それは僕がしっかりしなきゃ駄目ですね……」

寂しげに笑ったお兄さんは、ゆっくり私を見ました。

まだ私には、お兄さんの気持ちや岳理さんの考えが分からないけれど、2人はお互いに信頼関係ができているように感じました。

……どんな友人時代を過ごしたんでしょう。



「明日はお互い頑張りましょうね。僕は、みかどちゃんの事を心から応援しています」

そう言って右手を出されたので、私もおずおずと右手を出しました。




ふふっ 握手とは何だかくすぐったいです。



「みかどちゃん」


「はぁ!? 信長がいねぇ本能寺の変って馬鹿かよ」

「儂は明智光秀じゃ」
「「俺らは、美少年小姓蘭丸!」」

「あー……、じゃあ私は藤吉郎で」
「えっ 葉瀬川さん! そうしたらお茶々の私と恋仲になりますよ!」
「俺が秀吉!!」


「あはは……。皆さんホットケーキで酔ったんですかね」

お兄さんがププッと笑いながら、騒がしい皆さんを見ていました。


「お兄さん、今何か言いかけました?」
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