202号室の、お兄さん☆【完】
もう私の頭上を何機も飛行機が通過していた。
空港内の喫茶店の吹き抜けになっている窓際の一番奥に私は座る。
空は快晴。
空港内は土曜日だから、意外と人が多かったし、行きの道路には飛行機を見に来ている家族が所々で見られた。
『勉強ができない奴は、私の家族には要らないんだぞ』
それは、小学校受験に落ちた時に言われた言葉だった。
『皇汰は、昔から利発て聡明で、本当に素晴らしい。
代々、楠木家は学者ばかりだが、その血を受け継いでいるな』
皇汰は、お父さんに頭を撫でられて、得意気に笑っていて、皇汰のお母さんがお父さんを怒っていた。
『なのに、お前にはがっかりさせられる事ばかりだった』
私を、蔑んだ目で見るお父さんは脳裏に焼き付いて離れない。
『聖マリアを補欠入学なんて、恥ずかしいと思いなさい』
「珈琲のお代わりは如何ですか?」
綺麗な店員さんが珈琲を持ってやって来てくれました。
「お、お願いします」
そう言うと丁寧に会釈して珈琲を注いでくれました。
その女性が腕を動かすと、ふんわりと甘い香りがしました。香水でもつけているのかもしれません。
味がしない二杯目の珈琲を冷ましながらゆっくり飲み、父を待ちます。