202号室の、お兄さん☆【完】
「だから、就職が決まるまでお父さんに会いたくないんです。
お父さんの発言に左右されず、
自分で迷って、
自分で失敗して、
自分で歩んでいきたいんです」
そう言うと、珈琲を半分まで飲んで、紙ナプキンで口を拭きました。
まだまだ父は不機嫌そうです。
「私ね、T大やM大に落ちた時、心の中でこう思ったんです。
『行きたくなかったけど、お父さんに言われたから受けたんだ』って」
「人のせいにする気か!!」
「お父さんのせいにしたくないから、会いたくないと言ってるんです。
また何か失敗したら、駄目だったら、そう思ってしまう。『お父さんが強制するからだ』って。
でもそれは、ズルくて……卑怯で……全然私は成長できないんです」
――少し試したくて、珈琲のお代わりを頼むと、お姉さんは砂糖とミルクを1つずつ持ってきた。
香りと数と視線で、私は気づいてしまいました。
「お父さんは、私に興味が無いと思いますが、私、毎日毎日とても嬉しくて楽しくて……泣きたいぐらい胸がいっぱいなんです」
そう、初めは千景ちゃん。
「引っ越してすぐに友達ができました」