202号室の、お兄さん☆【完】


「『同情、哀れみ』です。『知識が無いのは、時に残酷だ』という言葉は確かに間違えてないなって思いました。大学でも勉強はしっかりします。知識は無いよりあった方が良いって分かりましたから」


日本人の私が、ドラガンさんに日本の知識を教わったのは、逆に良い刺激だったと思います。


「葉瀬川さん……、葉瀬川教授も素敵な方ですよ」

私がそう言うと、父は露骨に眉をしかめた。
そこまで顔に出すなんて……、葉瀬川さんより父は子供っぽくてちょっと恥ずかしいです。

「『若者は青臭く悩めばいいんだよ。それは人生においてかけがえのない宝になる』、そう言ってくれました。いつも悩んでばかりの私は、すごく救われました」

「はんっ 高説だな」

珈琲を一口飲むと、音を立てながら混ぜだした。


「家ではお義母さんもお父さんも洋食好きだったから、葉瀬川さんの和食は新鮮で美味しかったし、お母さんが生きていたらこんな感じだったのかなって……。理想の家族を想像する事ができました」


「あいつは昔から女に好かれるからな」

葉瀬川さんの話で更に父は不機嫌になりました。


私が言いたい事が、父に伝わるのでしょうか……。
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