202号室の、お兄さん☆【完】
「そうやってお父さんは、良い所も否定しますよね」
そう言われ、父は目を見開いた。
――どうやら自覚が無かったようです。
「まず全てに否定的な発言をするから、私はお父さんとの会話は怖かったです」
嫌いです。大嫌いでした。
「だから、ですかね。『否定しないでまず受け止めるみかどの考え方、結構救われた』と、言ってくれた方も居ました」
その人には……甘える事ができました。弱い私も全て受け止めてくれました。
「それは今後気をつける。だがー……」
「皇汰の事ですか?」
そう尋ねると、ばつが悪そうに斜め前に視線を逸らされた。
「皇汰は、私がお父さんと離れるなら、お父さんの側に残る理由は無いって思ってますよ」
「何だと!?」
「だって本当はお母さんが好きですもん。お母さんと私を守る為に、あの家に残ってくれただけですし」
「皇汰……皇汰も私が嫌いなのか?」
『も』という言葉は少し引っかかります。
「私も皇汰も嫌ってません。
ただ」
そう言って、珈琲の水面を寂しく見つめた。
「ただ、家族とはもう思えないだけです」
ゆっくりと、ゆらりと、
水面をたゆたう、――決別。