202号室の、お兄さん☆【完】
「何を言うかと思えば……」
そう言いながらも、父の珈琲を持つ手がフルフルと震えていた。
「私は、統計学に基づいてお前たちを教育してきた。何故そんな私が、家族じゃないと言われなければいけない!!」
珈琲を乱暴にテーブルに叩きつけ、怒りに震える父。私は黙ってこぼれ落ちた珈琲を拭いた。
「お前は、競争心が足りず長女として甘えすぎていた!! だから弟と比較して競争心を育てたまでだ! それは統計学に基づいたしっかりしたデータから推測したんだ。それぐらいで何故」
「――何故ですかって?」
激昂し震える父を、冷静に見つめながら、終わりが微かに見えてきた。
「私の気持ちは、統計データでは表せないからです」
やっと言えた気持ちに、ホッとした笑顔がこぼれ落ちました。
「お父さんの統計データは、製薬会社や大学では大事で大切な情報だとは思います。
でも私の気持ちは毎日一緒ではありません。今日は楽しくても、明日は悲しいかもしれない。
私や皇汰の気持ちは、お父さんの愛する統計学には現れません」
そう。
私のデータは数式では出てこないはずなんです。