202号室の、お兄さん☆【完】

ダークスーツにサングラス、無精髭に、……今日は頬にアウトローな引っ掻き傷をつけているこの方は、正しく!


「ヤ、ヤクザ!!!」

「……ヤクザ?」

怪訝そうな父の背後に近づくもう1人の男性は……。

サラサラな髪に中性的で綺麗な顔、白いスーツに赤いブラウス。手には真っ赤な薔薇の花束……。この姿は正しく!

「ホ、ホスト!!!」


やっと後ろを振り向いた父は、2人を見て固まりました。



「お久しぶりです。楠木教授」
「……相変わらずの節操なしか」


挨拶もそこそこに2人は私と父を交互に見ました。



「お、お兄さんにが、岳理さん……」

私が間抜けに大口を開けて2人を見ると、2人はそれぞれ思い思いの表情を浮かべました。


「みかどちゃんも終わる頃かと思いまして」

「……さっさと帰るぞ」


「ま、待って下さい。まだ父に答えて貰ってないんです」

そう言うと、先ほどの珈琲のお代わりを持って来てくれた女性が近づいて来た。


「2名様ですか?」


この白黒の怪しい2人に、にこやかに対応するとは大物です。

大物ですが……、



「あの、父の浮気相手さんですか?」


そう尋ねると、綺麗な顔が冷たい笑顔を貼り付けました。
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