202号室の、お兄さん☆【完】
快晴の空を割るように、飛行機が飛んで行く。
それを見ながら、肩車をしてもらって喜ぶ子どもや、一緒の目線までしゃがんで見上げる家族。
そんな情景に憧れた時代も確かにあったはずなのに……。
「なんでですかね。もう父に縋れる程、私の心は綺麗じゃないみたいです。なのに、この空のように晴れ晴れした気持ちです」
「いーいー。あんな、浮気癖がついたオッサンの愛情なんて要らねーよ」
そう言って胸元に手を入れ、煙草を探す岳理さん。
……申し訳無いですが、拳銃を出して来そうな風貌です。
が、それよりも!
「お、お兄さん!」
飛行機雲の写メを撮っているホスト姿のお兄さんに私は感動しました!
姿や服装ではなく、――此処に居る事に。
「が、頑張ったんですね! 大丈夫でした? は、初めての土曜日は如何ですか??」
微かに潤む目を見開いて、お兄さんを凝視したら、お兄さんも少し潤んでいました。
「実は、盛大に暴れてしまって、岳理くんの頬を引っ掻いてしまいましたが……」
そう言うので岳理さんの方を振り返ったら、アウトローな傷をわざとさすって居ました。
「傷が残ったら、嫁に貰ってもらう予定だ」
や、ヤクザなお嫁さんは嫌です!