202号室の、お兄さん☆【完】
花忘荘に戻ると、スーツ姿のドラガンさんが、花壇の前に立っていました。
私に気づいたドラガンさんが陽気に笑います。
……喋らなければ緊張してしまう程に、やはり王子ルックスです。
「ほれ、この花、咲いとるぞ」
「え!!? サフィニアが!?」
慌て駆け寄ると、蕾の花たちの中に、一輪だけ紫色のサフィニアが咲いていました。
「綺麗……。素敵な色ですね」
「この花の花言葉はなんじゃ?」
「あ、知りません」
私がそう言うと、ドラガンさんは大袈裟に転けるふりをしました。
「ドラガンさんは知らないんですか?」
「んー、思い出せなくてな。
ああ、でもサボテンの花なら知っとるぞ」
「え!」
私が驚くと、胸元から扇子を取り出して口元を隠した。
「撫子にぴったりな花言葉じゃ。自分で調べてみぃ」
意味深に含み笑いをしたドラガンさんは二階へ上がろうとします。
「えええ! 今からバイトだから無理です! 気になってバイトに集中できません!」
私もすぐに追いかけると、ドラガンさんはにんまり振り返った。
……実は言いたかったみたいです。
「1つだけな。後は自分で調べるんじゃよ」
私が何度も何度も頷くと、ドラガンさんは勿体ぶって言いました。
「『内気な乙女』じゃ」