202号室の、お兄さん☆【完】


『オルティンドー』のドアを開け、お客様が居ないのを確認すると、すぐにお兄さんを呼びました。


「お! おおお兄さん!!!」

お兄さんはキッチンで仕込みをしていた様ですが、私の声に犬の様な笑顔で走って来ました。



「みかどちゃん! 勉強お疲れ様です」

「あ、ありがとうございますってお兄さん! ち、違います! これ、これです!!」

慌ててパンフレットの入った封筒を渡すと、お兄さんの顔はトマトよりも真っ赤になりました。
――つられて私も照れてしまいます。



「わ、私、ままだ混乱してて、う、嬉しいけど、その、あの」

「嬉しいんですか!?」

お兄さんの瞳がキラキラと光り輝いています。
しまった……。



「嬉しくないわけないです!!!! で、でも、お兄さん……



あ、あまり先に行かないで下さい!」


慌てて私が追いかけてばかりじゃ、なかなかお兄さんとの距離は縮まらないんです。


お兄さんの気持ちは嬉しいです。
凄く凄く嬉しいです。


だからこそ、『結婚』はしっかり考えたいんです。



「お、同じ距離で同じ目線で、同じ景色をお、お兄さんと見たい……です」

そう言うと、お兄さんは目をまん丸にしました。
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