202号室の、お兄さん☆【完】
ピーッ
「あ、パンが焼けました」
お兄さんがキッチンへ駆けて行きます。
分かってます。
私は今、贅沢すぎる悩みを抱えていると。
綺麗で優しくて……、私に可能性を教えてくれたお兄さん。
私みたいに、まだまだすぐ泣いてしまうし、劣等感の塊が想うなんて図々しいかと思っていたんです。
わ、私は、お兄さんが好きです。
隣に居ると落ち着くし、
ホッとして心が温かくなるんです。
遠くて、人とやんわり距離を置いていたお兄さんが、
今、壁を壊して、……いえ、壁を壊されて私と距離を縮めてくれようと頑張ってるんです。
距離をとるのは上手でも、縮めた事が無いお兄さんが、暴走してしまうのも、
本当は分かってるんです。
だって私はお兄さんのおかげで前に歩き出せたんです。
『みかどちゃんもいつか綺麗な花が咲きますよ』って。
それに、それに、私はお兄さんの王子さまですから!