202号室の、お兄さん☆【完】
「何で岳リンは、いつも指定日に来ないの? 土日に来られても困るって言ってるのに」
目尻のしわ、わし鼻、彫りの深い顔立ちの若々しいおじさんが、103号室から出てきた。
アンニュイな雰囲気で、表情も変えずに淡々と喋っている。Yシャツ姿のおじさんはネクタイを緩めながら、新聞の人に近づいていく。
「此方にも事情がある」
「岳リンの事情なんて、どうでも良いし、作業が一週間遅れるから、面倒なんだよね。――これ、ちゃんと指定した紙鑢?」
「#1000と#1200、50枚ずつ入ってる」
「あー、はいはい」
そう言って、ポケットから茶封筒を取り出し、新聞の人に手渡した。
一通り、やり取りが終わってから、おじさんは此方を見る。
「で、――君たちは?」
興味無さそうだけど、一応は尋ねてくれたので、私たちは我に返った。
「あ、の! 201号室に引っ越して来ました、楠木みかどと、遊びに来ている弟です」
「――ああ、はいはい。なる程」
菓子折、部屋に置いて来ちゃった。
「楠木先輩のお子さん達だねぇ……」
……えぇ?
「まぁ楠木先輩なんて専攻も違うし、どうでもいいや。
岳リンは、まだ居るの?」
さも、用済みだと言わんばかりの口調で追い立てる。