202号室の、お兄さん☆【完】

「ウチの岳理は、不器用な子だからなかなか友達って呼べる程、親しくなれる子は少なくてね。私も親なりに心配してたんだよね」


……ちょっとだけ、想像出来てしまいます。
口下手だから相手を怖がらせる岳理さんが。

私も最初は怖かったですし。



「でもね、そんな岳理が初めて友達を連れて来たんだ。
大学時代に、鳴海くんを」

そう言うといきなり、電灯に向かって手を振り始めました。
私にも、振るように催促します。

もしかしたら、監視カメラ?かな。
レンズの向こうで岳理さんが待っているのかもしれません。



「ズッバズバ痛い所をつく発言をしたり、気に入ったら距離を縮めてくる岳理と、相手の気持ちを察し、やんわり距離を取る鳴海くんは、本当に相性も良かったみたいだ」


そう言うと、少しだけ切なそうに下を向きました。


「だから、岳理は臆病になってる。親友を、自分の身を呈してでも守りたいみたいなんだよね」


そう言いながら、階段の1/3ぐらい登った時点で、上から怒鳴り声がしました。



「てめぇ、余計な事吹き込むなよ! 早く登って来やがれ!!」


ちょっぴり怒っている岳理さんの声です。
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