202号室の、お兄さん☆【完】
玄理さんは、何も聞かずただお休みの挨拶をし、私もお礼を言って別れました。
深夜1時を過ぎた花忘荘には、電気は点いていない……かと思いきや、私とお兄さんと葉瀬川さんの103号室以外は点いてます!
皆さんに見つからないように、
薄暗い電灯だけを頼りに、花壇の前で花言葉の本を開きました。
指で1つずつ名前を探しながら、
サ……、
サイネリア……
サフィニア!!
サフィニアとその3つ程下に、サボテンもありました。
「……!」
「……みかど?」
101号室のドアを開けて、此方を見ている千景ちゃんが居ました。
「部屋に戻らないからどうしたのかと思っ……」
近づいて来た千景ちゃんは、私の顔を見て、立ち止まりました。
「――泣いてるの?」
わ……、
私は嗚咽を唇で噛んで殺しながら、ただただ頷く事しかできません。
孔礼寺では我慢できたのに、
こ……こんな花言葉を見てしまったら、涙が溢れてしまって、
私……わた、し。
「ち、かげちゃん……」
「――ん?」
横に座って、私の顔を覗き込んでくれた千景ちゃんの笑顔は、優しくて暖かくて、
私はしっかり本を握り締めて泣きました。