202号室の、お兄さん☆【完】
「ち、千景ちゃああぁぁん!!」
本を投げ捨てて、千景ちゃんの胸に飛び込みました。
ち、千景ちゃんの胸は、私のガリガリな胸より、むっちりぷにぷにしていました。
こ、こんな状況ではなかったら照れてしまっていたかもしれません。
今日、だけ。
今、だけ。
……この瞬間だけ。
泣かせて下さい。
岳理さんは、お兄さんを選べと言いました。
わ、私は、その気持ちに名前を拾ってあげる前に、『それ』は終わってしまったんです。
始まらなかったんです。
だから、だから、
いっぱい泣いて、泣いて、泣いて、
心に溢れている苦しい気持ちを流して、
私はお兄さんの気持ちに向き合っていきたいです。
お姫様にはなれなくても、
お兄さんの王子様になれれば私は、
……私はなんて幸せなのでしょうか。
だから、今だけ、
今日だけ、
この瞬間だけ、
いっぱいいっぱい泣きます。
苦しくて、
胸が締め付けられて、
怖くて、大嫌いでも、
それは、私にくれた大切な感情でした。
足元に落とした花言葉の本が、パラパラと風に捲れていました。
開いて止まったページは、サ行の花言葉。