202号室の、お兄さん☆【完】
「あ、……最高に楽しかったのですが……」
女性はもう改札口へ消えていました。
「んだよ。お前ら、狐に摘まれた様な顔して」
「今、一緒に居たのは女性じゃなかったですか?」
お兄さんがそう尋ねると、岳理さんは下を向いて舌打ちしました。
「だから、速く帰れって言ったのに、アイツ」
「岳理くんもデートだったんですか?」
お兄さんのその質問に、
「そうだよ」
岳理さんはあっさりと答えました。
「……へぇ」
お兄さんは少し疑う様に岳理さんを見ましたが、岳理さんは普段通りの無表情で、何を考えているのか読めません。
「てか、お土産は……?」
岳理さんが手を出すと、お兄さんは手に持っているハズのサボテングリーンカレーを渡そうとして、
「落としたままだ!!」
と、レストランへ戻って行きました。
「――落とした物をお土産にするつもりか」
苦笑する岳理さんは、走っていくお兄さんを見ています。
此方は見ようとはしませんでした。
「い、今の人は、――こ、恋人なのですか?」
私がそう尋ねると、岳理さんは、舌打ちしませんでした。