202号室の、お兄さん☆【完】
「まだ、違う」
その言葉に安堵しつつも、すぐに胸が痛くなりました。
「まだ?」
「トールに殴られた理由だよ。『誰でも良いから女を紹介しろ』って言ったら腹を殴られた」
……そんな理由だったんだ。
女性を大切にするリヒトさんとトールさんなら確かに怒りそうですが、
ですが、何か少し引っかかります。
「だから、まだ違うけど、これから先は分からねぇ」
「そ、……ですか」
「ありましたよー!」
お兄さんがサボテングリーンカレーをブンブン振り回しながら、此方へ笑顔で駆けて来ます。
「だから、俺の事は気にするな」
「……?」
「俺は、誰でも簡単に好きになれるから、気にすんな」
「ど、ゆ、意味ですか?」
私が聞くと、やっと此方を見てくれました。
けれど、何を考えているのか分かりません。
「みかどには、迷惑かけたけど忘れて欲しいってコト。
みかどと鳴海はデートした。俺もデートした。だから気にすんな」
――フィフティ・フィフティだろ?
と言われましたが、
よく、よく意味が分かりません。
そのまま私から離れて、走って来るお兄さんに近づいて行きました。