202号室の、お兄さん☆【完】
聖マリア女学院に通っていた頃は、夜20時以降は保護者同伴でなければ外出は硬く禁じられていました。
だから、明るい夜の街なんて歩いた事はありません。
ショッピング街を通り抜け、右に曲がって、ゆっくり歩いて花忘荘へ帰ろうと思ってました。
が、
曲がった瞬間、固まってしまいました。
スーツ姿の男の人たちだらけの道、ほ、ホストクラブだらけみたいなのです。
声をかけられる前に逃げようと後ろを振り返ると、
目をまん丸にしたトールさんが立っていました。
「え……? みかどちゃん?」
綺麗な女性2人に囲まれていたトールさんが私を見て、言葉を失っていました。
素敵で高そうな黒いスーツのトールさんは、誰もが振り返るぐらいオーラを放っています。
女性たちも私を見ていました。
「まさか、俺を追いかけてきたとか!?」
「……? い、いえ。私はただ、遠回りして帰っているだけです」
そう言って逃げ出そうとしましたが、トールさんは女性たちに謝りながら、此方へ駆け寄ってきました。
「悪いけど、弱ってる女の子を放っておける程、俺は最低じゃないよ?」
……おいで、と両腕を捕まれて微笑まれました。