202号室の、お兄さん☆【完】
「――あ、あとで」
「却下だ」
「!」
近づいてくる岳理さんを睨みつけながらも、慌ててお兄さんの背中に顔を埋めてしまいました。
「じゃ、岳リン。私たちは帰るよー」
葉瀬川さんは自分の車のキーらしき物を振り回しながら言い、それに皆さんも続いて、立ち上がりました。
「あ、私も一緒に……」
「ごめんねー、5人乗なんだ」
そう言っていると、
岳理さんにしっかりと手を掴まれてしまいました。
「お、お兄さんっ」
助けを求めたお兄さんは、真っ青な顔で、親指を突き出して言いました。
「お互い、頑張りましょう」
そう言うと立ち上がり、廊下を歩いて自室へ戻って行きます。
皆さんも、階段でグリコをする声が微かながらに聞こえていました。
「あの、私もそろそろ帰りたいのですが……」
「じゃあ、さっさと言え。すぐに言え。今すぐ言え」
岳理さんは縁側に腰掛けると、引っ張って私も座らせました。
ち……近い!
心臓の音が聞こえたらどうするのでしょうか。
「みかど」
耳元で名前を呼ばれてしまい、
私は覚悟を決めるしかありませんでした。