202号室の、お兄さん☆【完】

孔礼寺のお客様専用駐車場には、いつぞやの白いリムジンが止まっていました。
運転手さんがワックスをかけるのを、葉瀬川さんが何か話しかけていました。



「まぁ! 鶴屋鶴寿庵(つるやかくじゅあん)の屯所餅ですわね」

縁側からこっそり覗くと、麗子さんは海外帰りとは思えない疲れが見えない、美しい姿勢で座っていました。


「京都にある新撰組壬生屯所、八木邸の和菓子屋ですわよね。ドラガンさんが新撰組ごっこしてる時、よく買いましたわ」
そう機嫌よく話している相手は、玄理さんです。玄理さんはお代わりのお茶を注ぎながら、此方も機嫌が良いです。

「私が新撰組ファンでして。ドラマで人気だった時は売り切れでしたよ」

「今は、時代は『本能寺の変ごっこ』らしいですものね」

――べ、別に時代は本能寺の変では無い気がしますが……。
というかドラガンさん達、新撰組ごっこもしてたんですね。



「連れて来たけど?」

そう言うと、岳理さんは私の頭をポンポン叩きました。



「話があるんだろ? 俺のだから手短に頼みますよ」

「!?」

「あらあら」

話? 俺の!?


「ちょっと、みかどさん。
お庭を散歩しませんこと?」

そう、否定もできない美しい笑顔で麗子さんは言いました。
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