202号室の、お兄さん☆【完】
「夫は、私を裏切ってなかったと証明されたのですもの。
本当に長かったわ……。鳴海さんが可愛くて可愛くてしょうがない反面、鳴海さんのお母様を憎んでしまう醜い自分と戦うのが、本当に苦しかったのよ」
そう言うと、慈愛に満ち溢れた暖かい笑顔で私を見ました。
「貴女の事もお聞きしました。だから急いで帰国したのに、貴女は恋人ができましたのね」
「はい。すみません……」
「謝らなくていいの。貴女は鳴海さんを助け出して下さった。見返りも無しに愛して下さった。……それだけで十分です。
鳴海さんは、目には見えない、けれどそばにある『愛情』を、確かに手に入れましたもの」
そう言って、また池を覗き込むように座ると、優しい声色で言いました。
「けれど、貴女が鳴海さんの精神安定剤である事は何物にも変えられない……。だから」
麗子さんは、此方を見ようとせずに、落ち着いた声で言いました。
「だから、貴女も鳴海さんと一緒に、
NYへ来て頂きたいの」
や、はり、此方は振り向く事なく、けれど意志は強い、芯のある声でした。
「巽海さんの所へ、2人で」