202号室の、お兄さん☆【完】

「…………」
麗子さんは立ち上がり、胸元を整えてから深々と頭を下げました。


「また、夜に迎えに来ます。――その写真、鳴海さんに渡しておいて下さいな」


チラリと温室を見ると、そう仰って孔礼寺を降りて行かれました。


「が、岳理さん……」

「こうなるんじゃねぇかって予想はしてたよ」

そう言うと、私の服の裾を掴んだ。
掴んだまま、岳理さんは縁側へ進み、座りました。


「え! きゃっ」

引っ張られて私は岳理さんの膝に座り込んでしまうが、そのまま後ろから抱きしめられてしまった。


「あ、の!」

「――だから、鳴海にお前を譲ろうかと思ってたのに」


「は、離して下さいっ あの、わ、私!」

膝の上で抵抗すると、更に強く抱きしめられて、全身が心臓の様に熱く、高鳴る。



「――離さない」

そう言って、私の背中に顔を埋める岳理さんは、

煙草とワックスと、――甘い香水の匂いがしました。



「い、いつから有栖川さんが父親だって気づいてたんですか?」

「………」


「きやぁあ!!!!」


へ、返事の代わりに、く、首を噛まれました。


「んでこの状況で、鳴海なんだよ。色気ねぇなあ」


ちょっぴりご立腹です。
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