202号室の、お兄さん☆【完】
「えっ」
「出前のお寿司が届きましたよー」
先ほど言ったのは、お寿司を持った葉瀬川さんでした。
「岳リンの奢りで特上4人前だよ。お金払って来て~」
「っち」
岳理さんは面倒臭そうに立ち上がり、玄関の方へ消えて行きます。
葉瀬川さんは奥の部屋からテーブルを持ち出すとテキパキと縁側に座布団と一緒に並べました。
「鳴海ん、まだ若いんだから行ってくれば良いじゃん」
そう言って、特上寿司の一つからかっぱ巻きとトロを入れ替えて、また蓋をしました。
お兄さんは少し俯いて、首を振ります。
「……いえ。お店もあるし、定宗さんも、お店の皆さんも居るし」
「本音は?」
「え」
「岳リンには内緒にしてあげるから、本音は?」
葉瀬川さんがそう淡々と聞くと、お兄さんは寂しげに笑いました。
「フラッシュバックでお、父さんにご迷惑かけたくなくて……」
「嫌われると思ってるんだね」
葉瀬川さんは何度も頷きます。
「そんな! うちの父みたいな親は珍しいんですよ!」
「みかどちゃん……」