202号室の、お兄さん☆【完】
縁側でのんびりと葉瀬川さんが眠る中、3人で温室でサボテンを見ていました。
岳理さんも落ち着きなく、また煙草を吸い始めました。
今日で一体何本目なのか、分かりません。
「あの、お兄さん……」
私が話しかけようとすると、岳理さんに肩を掴まれ、制止されました。
お兄さんの肩はまだ震えて、今すぐ消えてしまいそうな程に、儚かったです。
「僕、」
弱々しく掠れた声で、言いました。
「僕、
まだ2人と離れたくない、って、
そう思ってました」
そう言って振り返ったお兄さんの目には、いっぱい涙が溜まっています。
「せっかく、みかどちゃんが壊してくれたのに、
岳理くんとまたこうして笑いあえるのに、
守られて、僕は今、幸せで、満たされているのに」
ギュッと両手を握り締めると、深々と頭を下げて来ました。
「父親に会いたい、です。確かなモノなんて何も無いのに、会いたいんです」
嗚呼、お兄さん。
私と岳理くんが気になって、身動きがとれなくなっていたんですね。
私たちに助けてもらいながら、
私たちを捨ててNYへ行くと思って罪悪感があるんですね。
それでもし行って、父親に嫌われたらとか、
今お兄さんの心の中は不安だらけなんですね。