202号室の、お兄さん☆【完】
静かな店内に、私とお兄さんと定宗さんの3人。

月の光が、微かにテーブルに反射して淡く光っていました。


空っぽになった冷蔵庫、ピカピカに磨かれたロッカールーム。
バジルと、あの日買ったサボテンがただお兄さんの腕の中にあるだけでした。


「風通しに時々来ますね。
数年後、また再開する時の為に」

「……はい」

お兄さんは、寂しげにテーブルをなぞると、頷きました。




「みかどちゃんと出会えた月日は、短くて早くて、


けれど一生忘れられない大切な時間になりましたね」

「お兄さん」

「みかどちゃんとアルジャジーノンが花開く日を楽しみに……、と思ってましたが」

お兄さんは私の髪に優しく触れました。



「僕が想うみかどちゃんは、――いつも色鮮やかでした。
色鮮やかに咲く、花のようでした。
可愛らしい、小さい花だと思っていたのに、毎日毎日小さな花は咲き続けて、僕の心から溢れていきました」

「お兄さん……」


「みかどちゃんは、僕の心に咲いた、綺麗なお花です。NYへ行っても枯れないように、毎日毎日お水をあげますね」


そう言ったお兄さんの優しさは、
今日の月の光のように美しく、私を包み込んでくれました。




「だから僕が行くまでは、あのオオカミから守ってあげますので!」
「……へ?」
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