202号室の、お兄さん☆【完】

「んだよ。これから毎日見れるんだから、慣れろよ」

岳理さんはタオルを肩にかけると、びしょびしょのTシャツをギュッと絞りました。

岳理さんの意味深な言葉にはノーコメントですが、
よ、……よく見たら皆さん上半身裸で、それぞれの泥だらけのTシャツを洗っていました。


お兄さんも、活き活きとTシャツを洗っています。

私、
あんな風にはしゃぐお兄さんが、
子どもに戻ったみたいにはしゃぐお兄さんが

愛しくて大好きです。



けれど、そんなお兄さんを見るのはもう今日で……。


「――寂しい?」

「へ?」


「鳴海が明日で居なくなって、寂しい?」



バサッとタオルを落とされて慌てて横を向くと、

岳理さんはタオルに隠れて、そっと、――右手を握り締めてくれました。



「俺は寂しいよ」

水で濡れた煙草をポケットから出しながら、飄々と言います。

脳裏には、初めて会った日の、真っ赤なお兄さんが過ぎりました。




「寂しいけれど、岳理さんが居てくれるから」

そう言って、手を握り返すと、岳理さんは極上に甘く笑いました。




「俺も」


 
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