202号室の、お兄さん☆【完】
岳理さんの背中にしがみつきながら、どんどん潮の匂いがして来ました。
相変わらずの猛スピードとジグザグ運転に、心臓はドキドキしっ放しです。
港には、豪華客船を一目見ようと野次馬やカメラマン、TVのカメラも回っていました。
「突如現れた、このNY経由の豪華客船は、なんと!日本に来るのは27年ぶりです。『TATSUMI ARISUGAWA』プロデュースのメニューが有名で……」
アナウンサーが台本を読む後ろを、バイクで颯爽と走り抜けて、人々が振り返ってバイクを避けて行きます。
「お兄さん!!!!」
「鳴海!!!」
まだ船への入り口は閉められてはおらず、私が降りると岳理さんはバイクから飛び降りました。
「お前、先に行け!」
バイクを止めている岳理さんに言われ、私は入り口に向かって走り出しました。
「お兄さん!! お兄さん!!」
船のデッキを見回したり、何百もある部屋の窓を確認しますが、お兄さんの姿が見当たりません。
ミャア~~
すると、低重音の鳴き声が聞こえてきました。
「鳴海さん、もう少し、左です。左」
声のする方向へ振り向くと、
定宗さんを抱っこした麗子さんと、5色の紙テープを弄るお兄さんの姿がありました。