202号室の、お兄さん☆【完】
「お兄さん! 何してるんですか!?」
「何って、
お見送り用の紙テープを垂らしています」
船の上から麗子さんと定宗さんの指示で、右に行ったり左へ行ったり、お兄さんはマイペースです。
わ、私たちがどれだけお兄さんを心配した事か!!!!
ふらつきながら、膝をついて倒れてしまいました。
……まさか飛行機を使わず、船で行くとは。
「み、皆さんに嘘を言いましたね! 葉瀬川さん達は、『香港経由 南アフリカ・ルクセンブルク行き便』前でずっと待ってますよっ」
そう言うと、お兄さんはぷふっと小さく噴き出しました。
「いつも皆さんに振り回されてたから、最後にお返しがしたくて」
「が、岳理さんの携帯アラームも止めました……?」
「いつぞやの日本語Tシャツのお返しです」
そう言って、5色の紙テープを私に渡して来ました。
「それに、絶対に見つけてくれるって、信頼してましたから」
だから、そんなに余裕で紙テープの位置を確認してたんですね……。
「3ヶ月後、一度帰って来ます。千景さんの合格発表もあるみたいですし」
「お兄さん……」
「僕ね、もし親の愛情を理解できたら、親の愛情を貰えたら、
みかどちゃんへの気持ちも、恋に変われるかもって思うんです」