202号室の、お兄さん☆【完】


初めて会った日のお兄さんは、トマトのように真っ赤だったのを覚えています。

普段は着飾らないのに、いざお店に入ると、オーナーだなって思わせるほど、色気があって格好良くて……。


お兄さんの優しさに触れると、私もふんわり優しくなれる気がしました。

辛い過去や、フラッシュバックを乗り越えて、

私たちの手をとり、監禁から抜け出してくれました。



日毎、お兄さんへの愛しい気持ちは募って募って募って……
私の心の中、いっぱいでした。



「お前、泣いてんの?」


岳理さんにそう言われ頷くと、岳理さんは私の涙を掬いました。


「俺も、慰めて?」

そう言った岳理さんの瞳にも、うっすら涙が溜まっていました。



紙テープが千切れても、

皆さんはお兄さんが乗る船に、ずっとずっと手を降っていました。



その皆さんの後ろで、


私と岳理さんは、泣きながら甘酸っぱい、




キスをしました。


 
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