202号室の、お兄さん☆【完】
「わぁぁ!」
連れて行かれたのは、なんと海!
またもや玄理さんのバイクを無断で拝借し、岳理さんは海に連れて行ってくれました。
「あ、あの港は!」
私が指さした港は、先日、お兄さんが旅立たれたあの港でした。
「――あの港は?」
シュッと煙草に火を着けながら、岳理さんが一字一字ゆっくり言います。
や、やばばばっ
「麗子さん達が旅立たれた場所ですよ!」
「岸六田不動産の財力が、日本中に知れ渡った場所でもあるな」
た、確かに。
麗子さんとお兄さんと定宗さんだけを乗せる為にわざわざ進路を日本に変更したんですから、どんな取引があったのか気になりますが……。
「鳴海、有栖川って名字になるかもらしいな」
「へ!?」
「あのお色気クソババアから完全に逃げる為に」
岳理さんは私の腕を掴むと、スルリと滑らせて手を繋いでくれました。
そしてそのまま、波寄せ際に向かって行きます。
「有栖川 鳴海、かぁ」
そう呟いて海を眺める横顔は、憂いを感じられ格好良いのですが……。
「岳理さんだけ、ずるいですよ!」