202号室の、お兄さん☆【完】
「今夜、か、階段でー……」
そう答えると、極上に甘く微笑みました。
「で、2人が砂まみれだったのは、喧嘩じゃないんじゃな」
私と岳理さんがお互いの髪の毛をタオルでガシガシ拭いていると、縁側でお茶を飲んでいるドラガンさんが言いました。
「海辺でクラウチングスタートの練習をしてたんです……」
「――へぇ」
岳理さんは意味ありげに含み笑いを浮かべると、煙草を口に加えました。
「なっ なんですか! 何も無いのに! 本当にクラウチングスタートなのに!!」
「そう言う事にしとくか」
余裕な岳理さんを無視して、ドラガンさんに振り返ります。
「ほ、本当ですよ! 海辺でハシャいでただけです!!」
ドラガンさんは目をパチパチさせた。
「まぁ、儂は無粋な事は聞かぬ。それより夜ご飯は何じゃ?」
ドラガンさんは孔礼寺のご飯がお気に入りなので、私の話には興味無いようです。ホッとしました。
和食で、出汁だけ効いた薄味にトキメいているようです。
偶に朝、修行僧さんたちと本堂を掃いたり、廊下を雑巾がけしています。
「覗きに行きましょうか?」
微かに良い匂いもしますし。
「なんじゃ? 手伝うのはもうやめるのか?」