202号室の、お兄さん☆【完】
『で?』
……誰の声、だろ。
『その服を買えば、お前の成績は上がるんだな』
……何、言ってるの?
『お小遣いはこの口座に振り込む。お小遣いの額は統計データに基づいた、高校生の平均額だ』
……確かに、不自由はしなかったね。
……でもそんな言葉が聞きたかったんじゃ、ない。
違うん、だよ。
私、は……。
「気がつきました?」
……え。
「貧血ですかね? それとも極度の緊張?」
「お、お、兄さん……?」
私を覗き込むお兄さんが、優しく首を傾げる。
あ、ここ、お店のロッカールームだ……。
眼鏡が無いから、視界がぼやけるけど。
「はい。お水、飲めます?」
渡されたお水、冷たくて美味しい。
「許してあげて下さいね。理人さんも透さんも、12人兄弟の長男で、女の子が兄弟で欲しかった反動で、あんなに女の子に執着してるんですよ」
「あ、あ、あの2人は……?」
時計を見ると、お昼の休憩タイムだ。お店のドアにはclosetの看板がかけられている。
「すいません。理人さんは仕事、透さんは学校です。ずっとみかどちゃんを心配してたのですが」
あ……
凄く悪い事しちゃった。