202号室の、お兄さん☆【完】
「ま、まずは失敗してから学んで……」
「鳴海になら素直に聞くのになぁ~~」
やれやれ、と岳理さんは手を洗いタオルで拭くと、ぴったりと私の背中にくっ付きました。
そして、私の右手を握ると、
後ろから一緒に包丁を動かしてくれます。
ですが、この体制の岳理さんは、オオカミだからだ、駄目です!
「く、首、噛んだり舐めないで下さいよ!」
「お望みならば」
「ほ、包丁でスパンッてしますからね!!」
「はっ動かせるなら動かしてみろ」
馬鹿にする岳理さんに腹を立て、包丁を持った右手をぐぐっと動かそうとしましたが、びくともしません。
「くっ ならば、えいっ!!」
スリッパを履いた足で思いっきり足を踏んでやりました!!
「みかど、軽いから痛くも痒くもねぇな!」
「ぬっ!!」
首筋に息を吹きかけたり、耳元で囁く岳理さんに対して私は、肘鉄したり、足で蹴ったり、両手で暴れたり大奮闘しました。
そうして、何十分にも及ぶ攻防戦を繰り広げて、私たちはしばし疲れてしまいました。
「……岳理さん、パエリア進んでないですよ」
「ああ。馬鹿やってないで真面目にやるか」
ば!?
馬鹿やってたのは岳理さんだけですっ
と言えたら苦労はしません。