202号室の、お兄さん☆【完】



「呼び捨てで呼んでみろよ」


囁くように命令する岳理さん。






うわぁぁぁ!
やっぱり、トールさんやリヒトさんの言葉を気にしてたんですね。


「年上の方を呼び捨てなんて、……できません」

「でも、恋人、だろ?」



『恋人』

だ、駄目です。恋人っていう言葉は反則です。


恋人って単語を聞いただけで、胸がきゅうってします。
動機が……。


「あっそ。じゃあ、俺は今からみかどの事、ハニーって呼ぶからな」

「じ、『じゃあ』って何ですか!?」

「うるせー、ハニー」


そのまま、移動しようと立ち上がった岳理さんの服を掴みました。


「――何?」


今離れては、誰に会い、
誰の前で『ハニー』と言うか分かりません。

逃がしたくないです。


「うぅ、い、言いますからお座り下さい」


嗚呼、お兄さん並びにアルジャジーノン。
私に力を下さい。


「俺の膝の上に座る?」

胡座をかいた岳理さんは、膝の上をポンポン叩きます。


「す、座りません」


で、すが、
こう、正面きって言うのはどうも恥ずかしいです。

「100メートル離れるか、電話でなら」


「は? お前の照れた顔が見れねーじゃん」
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