202号室の、お兄さん☆【完】
『お前』呼ばわりしていた岳理さんが私の事を、『みかど』と呼び始めた頃を思い出しました。
いきなり呼び捨てだったけれど、でも岳理さんがどんどん私の心に入って来たのはあの頃からです。
「ハニー、じゃなくて、
ちゃんと呼び捨てで呼んで欲しいです」
そう言うと、ポンポンと頭を優しく叩いて、岳理さんは笑ってくれました。
「ん~~」
「どう? 唯一くん、どの子がタイプ?」
肘でわき腹をつついている玄理さんに、葉瀬川さんはチラッと見て、溜め息を吐きました。
「なんか、面倒になってきたから寝ます」
「えぇ!?」
そう言うと、岳理さんが用意した布団に潜り込みました。
「あ、みかど女史。
さっきみたいに『唯一さん』って起こしてねー」
「へ!?」
「当分はみかど女史の台詞だけで、満足だなー」
そう言うと、すぐにまた眠ってしまいました。
残念そうにお見合い写真を片付ける玄理さんの横で、
岳理さんはちょっぴり不機嫌でした。
「っち。皆して、みかどを利用しやがって」
そう、私の為に拗ねてくれる岳理さんが嬉しくて、
私は岳理さんの耳元に囁きました。
『私の名前を、呼んでくれる岳理さんがー……』
大好きですよ、
と。