202号室の、お兄さん☆【完】
「どこで時間、潰そうかなぁ……」
『悪ぃ。部活長引く』
皇汰からそんなメールを貰いかれこれ30分。
皇汰が見たい映画があるらしく、付き添う予定だったのだが、皇汰は何時に終わるかも分からない。
――しかも。
お詫びを兼ねて勇気を出して、リヒトさんのお店に顔を出したら、頭からつま先までコーディネートして貰い、30分が限界で飛び出してしまった。
(早く、来て欲しいなぁ……)
左右を編み込み、後ろで結んで、黄色いシュシュで束ねた髪。
春らしいクリーム色の小花が散りばめられたワンピース。
抑えめのサンダルは凄く可愛いです。
……が、似合わないし、凄く落ち着かないです。
見られてるわけはないと分かっていても、視線が怖い。
(あ、本屋さんと花屋に行こう!!)
アルジャジーノンの育て方や、もう少し大きめの鉢植えも探したいし。
「おい、あんた」
でも、鉢植えならばホームセンターだよね。駅から離れちゃうなぁ。
「おい、おいってば」
でも皇汰の中学に近いから、メールして待ち合わせ場所を、
「楠木みかど!!!!!」
その瞬間、駅前広場で歩いていたほとんどの人が、その声に注目した。