202号室の、お兄さん☆【完】
「無視すんなよ」

え……。
この人、誰……?

無精髭が生えてるけど、今時の若い人みたいで、少し怖い。


「あの、どちら様ですか?」
何で私の名前知ってるの……?
そう尋ねると、不機嫌そうに唇を噛む。

「っち。 俺だよ、孔礼寺 岳理(くれいじ がくり)だよ」

ずいっと顔を近づけてくるので、一歩下がってじりじり逃げてしまう。名前を聞いても、分かりません。


「だ~か~ら~」

「君、君」

その男の人は、肩を叩かれた。
叩いた相手は、――駅前の交番の警察官だった。
注目浴びてたし、誰かが呼んだのかな?

「ここ、交番前だよ? 恥ずかしくないの? 中学生に勧誘したりして」

ちゅ……4月から大学生なのに! お化粧はしてないけど、洋服は可愛いのに、酷い……。

「俺、こいつの知り合いなんですけど、な!?」

振り返って、私に同意を求めたが、私は全力で首を振った。


「ちょっと、交番で話を聞こう。お茶ぐらい出すよ」

「本当ですって! 俺、あいつの名前知ってるし! 世話になった教授の娘なんすよ!」

慌ててる男の人と警察官を尻目に、私は猛ダッシュで駅前から逃げた。


「おいっ 待てって!!」


わぁーん。怖いよー!!
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