202号室の、お兄さん☆【完】
……ん?
教授の娘……?
駅が豆粒みたいに小さくなってから振り返った。
駅前の様子は見えない場所だけど……。
あの人、もしかして……紙鑢の人?
黒いシャツにGパンだったから分からなかったけど、無精髭、無造作に伸ばされた黒髪、キリッとした眉毛に、二重のぱっちり瞳。
硬派な凛々しい感じの、この前のまな板アーマーの時の人だ!
引き返そうかと思ったけど、……けど、
ごめんなさい!!!!
お父さんと関わりがあるなら尚更!!!
ごめんなさい!
私は、後ろ髪を引かれながらも、見えた本屋に逃げ込んだ。
「あれー、君は確か……」
適当に歩き回っていたら、二階の漫画コーナーから降りてきた人に話しかけられた。
「葉瀬川さんっ」
「君も、今日発売の週刊少年スキップを?」
「ち、違います」
葉瀬川さんの目が少し寂しげに揺れたが、すぐにまた無表情に戻った。
「ここの本屋がここらじゃ一番大きいから、良いよね」
「そうなんですね」
「何探してるの?」
「あ、園芸コーナーです」
そう言うと、葉瀬川さんが、手招きして案内してくれた。
「この花の育て方、分かりやすく漫画にしてるね」
「……はぁ」
「おっ このイラストは、昔好きだった漫画の」
「あの……」