202号室の、お兄さん☆【完】
「んー?」
「いえ、私なんかに付き合って、お時間大丈夫ですか?」
そう言うと、葉瀬川さんは怠そうに腕時計を見た。
「んー、待ち合わせしてるんだけど、来ないんだよねー。帰ろーかなー」
「帰っちゃうんですか!?」
「面倒で、携帯置いて来ちゃったし……。今日は縁がなかったんだよ、きっと」
そう言って、俯いた葉瀬川さんは、なかなか情緒溢れる切ない顔をしていました。
でも、俯いた先に見えるのは、手に握られた週刊少年スキップ。しかも、携帯しなきゃ携帯って言わないのに。
「やっぱり帰ろー。君は?」
「私は待ち合わせしてるので。あの、携帯貸しましょうか? せめて帰る連絡だけでも」
携帯を差し出すと、葉瀬川さんは頭をガシガシ掻いた。
「ん~~? 」
面倒臭そうに悩んでいるが、悩む事なのかな?
「相手は、葉瀬川さんを待って、何時間も待つかもしれないのですよ?」
そう言うと、携帯を受け取り、眺める。
「……番号、知らない」
葉瀬川さん……。
脱力していたら、突然携帯を後ろから取り上げられた。
「……はぁっはぁっ こ、れで逃げれ、ないぞ はぁっ」
息を切らし、汗だくなこの人は、
「……岳リン」